別にここに書く必要はないんだが、修論とかその発表にむけてちょっと自分の中の理解を整理しておこうと思う。まぁメモです。
まず第一原理計算ってのは実験データとか経験的パラメータとかを全部排除して原子番号だけを入力して理論計算をするってこと。僕のやっているのは電子状態計算。つまりシュレンディンガー方程式を解くっていうこと。原子と電子の多体問題について。
で、なんでシュレンディンガー方程式を解くかっていうと解くことによって(当たり前だが)波動関数がわかるからだ。波動関数がわかれば物理量はだいたいわかる。で、ここで密度汎関数法(DFT)ってのがでてくるんだけど、これは波動関数のノルム(二乗)をつかっても大丈夫ですよってことで、かなり重要な理論。なぜかってのはおいおい。
シュレンディンガー方程式のハミルトニアンってのは、大きく5つの項からできている。まず原子の運動エネルギー、電子の運動エネルギー。そして原子同士、電子同士、原子と電子とのクーロン力。ただしオッペンハイマー近似っていう近似をつかって原子の運動エネルギーと原子同士のクーロン力ってのはゼロもしくは定数におきかえられる。この近似は原子は電子と比べてめちゃくちゃ重いから動かないと考えますよ。ってこと。つまり原子の位置Riが定数になるっていう近似。実際は格子緩和などが起こるはずだが、その場合は求めたポテンシャルの中に原子をおいたばあいエネルギーが低くなるのはどこかってのを計算して、さらにその位置でシュレンディンガー方程式を解くってことをするから時間がかかる。だから後述の擬ポテンシャルの場合は使うこともあるが全電子法ではまずつかわない。
さて、ここでシュレンディンガー方程式を解く訳だが、厳密解というのは水素原子の場合しか解く事ができない。だから近似的にとくことにどうしてもなっちゃうわけなんだけど、ここで問題となるのはポテンシャルが波動関数の汎関数になっているってことで、電子が動いたら当然ポテンシャルも変わってしまうよねってことです。卵が先か鶏が先かみたいな。だからここでSCF(self consistent field 自己無頓着)ってのをつかって循環論的に解く。まず適当に波動関数をもとめて、それからポテンシャルを計算して、ポテンシャルで波動関数を計算して、、、こうやっていくといつか一定の値に近づく。で、実際には得られた波動関数に新しい適当な波動関数を混ぜて計算していく。DFTだと電子密度か。まぁこうすることでスピードアップと、ローカルミニマムに落ちてしまうことをさける。ただしその分精度が落ちてしまうから難しいところ。精度をあげるとローカルミニマムに落ちてしまうし。
さて、この波動関数をもとめるって作業だけど、規定を考えなきゃ大変すぎて無理になる。だから適当な規定をもってくるんだけど、それが計算する対象によって違う。分子とかの計算だとHFとかで原子軌道を創る。そうすることで波動関数を作るための関数が少しですむ。だけど固体の場合はそうはいかなくて、格子が無限にあるので計算がすごく多くなる。だからたいていの場合平面波をつかって計算する。ブロッホの定理によると、平面波exp(ik)の変調をうけて波動関数はくりかえすから、ユニットセルだけを計算すればよいとなる。そのかわり扱う平面波は多くなるけどしかたがない。
さてさてここでもいちどDFTがでてくるんだけど、なぜDFTを使うかというと電子の多対問題を一電子問題にすりかえることができるからだ。波動関数を規定にとってしまうとN個の系では三次元で3N個の座標関数に由来する。しかし電子密度だと3個の個の座標関数だけですむ。つまり多体問題を多数の一電子問題にすりかえる事ができる。
でも実際は多体問題が解決したわけじゃなくって、電子密度におきかえたことで交換相関相互作用ってのを考えなくちゃいけなくなって、コーンシャム方程式(この電子密度による方程式ね。)ではその具体的な表式が与えられてない。結局この多体問題を解くために近似を使わなくちゃいけないっていうことになって、まぁ問題を後回しにしたわけだ。
ここでその近似の話だけど、有名なのは局所密度近似(LDA)。誰でも一度は聞いた事があると思うけど、これはある電子を見た時、その電子とそれ以外の電子"達"との相互作用を平均化して一様なガスとの相互作用と考えることにしよう。ってことです。問題は、こうすると自分自身との相互作用も計算してしまうから、局在してる系では計算がよくない事が多い。よくあうことも多いけど。比較的広がってる金属とかだといいけど、Siとかだとギャップがでないこともある。まぁSiの問題としては他にもあるんだけど(後述)。で、LDAを超える試みとしてGGAとかLDA+UとかSICとかあるけどよくわかっていない。GGAはLDAで平均化したものにgradientを考慮したもので、LDA+Uは実験的なパラメータから修正したもので、SICはその自己相互作用を補正してあげるわけだけど中身はよくわからない。どの近似がいいかというのはやってみなきゃわからない。何となくの傾向はあるけど絶対じゃないし。
というような計算の中身の話をしてきたけど、その計算をどの電子について計算するかってのがある。
一つは全電子法。もう一つは擬ポテンシャル。全電子法では全部の電子について計算する。有名なのはAPWで、平面波による計算。ただし、内核電子については波動関数を平面波で記述しようとしたらめちゃくちゃたくさんの平面波が必要となるので、原子の周りにマフィンティン球というのを考え、その中では球面調和関数で、その外(外殻)では平面はを使おうってやりかた。で、さらに精度の良いやり方がフルポテンシャルっていうやつで、内核の球面調和関数を非球面的な効果を入れることで精度と計算時間が飛躍的に伸びる。
僕がやっているのはKKR法ってやつで、これはグリーン関数を使う事で、これによって直接固有値や固有関数を求める事無く電子密度を求める事ができる。これに関してもマフィンティン球というのを考え、その中で計算する。球だから異方性のある物質はあまりよくない。これが上述のSiでの問題点その2。フルポテンシャルで計算するやり方もある。
で、最後擬ポテンシャル。これは内核の電子は先に計算しておいてそのデータを使って、外殻だけを計算してしまおうっていうやりかた。(多分)
ここでKKRの利点ってのはCPAが取り扱えるってこと。ただしCPAについてはよく知らない。よくわかんないんだけど、不純物を考えるときに、スーパーセルとかを考える必要なく、一様に5%とかドープした計算ができるってこと。よくわかんないんだけど使ってる。スーパーセルを考えると、密度が低いときはとてつもなく大きなのを考えなくちゃいけないし、っていう問題があるから。密度が大きいときの問題もあったきがするけどよくわかんない。
そんな感じだ。
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